事業紹介BUSINESS
防災系事業部
防災系事業部は、業界トップクラスの技術を保有し、現地調査からデータ分析、数値シミュレーションによる被災原因の究明や
予測計算等のサービスを提供しています。
構造解析部
世界的にも人類の活動の多くは沿岸域に集中しているため、津波や台風に伴う高潮といった自然災害のインパクトは甚大なものとなります。沿岸域における人々の安全・安心な暮らしを確保するためには、そういった自然災害の影響を適切に評価し、対策を講じる必要があります。
構造解析部は、高度な数値解析技術を用いたアプローチから、沿岸域における諸問題を解決し、地域の防災・発展に貢献しています。
代表的な業務内容
波浪変形計算・静穏度解析
島国である日本にとって、港湾は国内外の物流の要であり国民生活と経済活動を支える大きな役割を担っています。船により港へと運ばれてきた旅客や物資を安全に地上へと降ろすためには、船が波に揺られずに、安全に停泊できる水域を確保する必要があります。そのため、港湾は防波堤等を配置して外洋からの波の進入を抑え、港内の水域が静穏になる対策を施しています。
静穏度解析は港内の波の高さを算出し行います。その際に用いる数値計算手法が、波浪変形計算であり、外洋から進入する波が海域の地形、水深及び構造物の影響を受けて変化する波の高さを求める手法です。静穏度解析を行い、港湾の機能および利用の向上に貢献します。
津波・高潮シミュレーション
地震大国や台風常襲地帯といわれる日本では、古くから津波・高潮による被害を受けてきました。近年では、東北地方太平洋沖地震津波や大阪湾に来襲した2018年の台風21号による被害が記憶に新しいです。今後は、南海トラフ巨大地震による津波や地球温暖化に伴う台風の強大化による大規模災害が懸念されています。自然の脅威から、わたしたちの暮らしを守るためには、ハード的には防波堤等の整備やソフト的にはハザードマップの作成・頒布といった対策が必要です。
このような防災・減災に寄与する対策を講じるには、津波・高潮シミュレーションによる検討が有用です。津波・高潮シミュレーションは、波の高さや沿岸域の浸水深・浸水範囲、防護施設を対策することによる効果を平面的に”見える化”が可能です。得られた結果を用いて、被災原因の分析や地域・施設の脆弱性の把握、沿岸域の効率的な整備計画の提案を行っております。
計算例:津波来襲時のシミュレーション
数値模型実験
台風時の高波や津波といった非常に大きな波が来襲する場合には、構造物の被災や沿岸域への越波・浸水といった被害となります。こうした大きな波に対して構造物の設計や防災検討を行うためには、詳細な流体の作用(波高、流速、波圧、越波流量等)を把握することが重要となります。
これまでは、模型実験により流体の作用を確認する手法が行われていましたが、時間と費用が掛かりました。近年では、計算機の性能が向上し、数値シミュレーションを用いて手軽に模型実験と同等の検討を行うことが可能となり、実務での活用の機会も増えています。
防災解析部では、数値模型実験として数値波動水槽(CADMAS-SURF/2D,/3D)を用いた数値シミュレーションにより、設計に用いる外力評価や防災検討を行うサービスを提供しています。
- 計算例:高波浪来襲時のシミュレーション(CADMAS-SURF/2D)
- 計算例:高波浪来襲時のシミュレーション(CADMAS-SURF/3D)
船体動揺シミュレーション
船に積まれた物資を積み下ろす作業、または船へ物資を積み上げる作業を荷役(にやく)作業と呼び、一般的には船を岸壁に係留(けいりゅう)(=船を岸にロープなどでつなぎ止めること)させて行います。このとき、船は波の影響と、ロープの張力および防舷材(ぼうげんざい)(=船と岸がぶつかるのを防止するクッション材)の反力を受けて複雑に揺れて動きます。このように、船がどの方向に・どの程度揺れるかを解析する計算が船体動揺シミュレーションです。
荒天時に船の揺れが大きいために荷役作業ができない事例の要因究明や、船の揺れを小さくする係留方法の検討等に活用します。また、近年人気を増しているクルーズ旅行関連では、大型旅客船が安全に寄港可能かどうかの評価にも活用します。
水理解析室
水理解析室という部署名には「水理模型実験により水理現象を直接捉え」、「数値計算で検証して理解を深める」という意味が込められています。私たちは、これらの技術を併用して、波・流れを再現し、港湾構造物の安定性検証などの問題解決に取り組んでいます。
代表的な業務内容
港内静穏度・波浪変形
海底地形が複雑な海域においては複雑な波の変形を生じます。現地の海底地形を造波水槽の中に忠実に再現して波浪を作用させる模型実験を実施することにより、実際の波の変形を考慮した港内波高の測定や荷役稼働率の評価を行います。波高や流速のデータを取得するだけでなく、波の変形などの水理現象を目で見て確認することができます。
消波ブロックの安定性
混成防波堤のケーソンに作用する波力を低減するために、ケーソンの前面に消波ブロックによる消波工が設置されます。消波工の安定性は波の大きさだけではなく、消波工の天端の高さ、天端の幅、ケーソンの上部工の形状などによっても異なります。模型実験を実施することで、防波堤形状の特性に見合った適切な消波ブロックを選定することができます。
津波の越流
防波堤を越流した津波が港内側に作用することに対するマウンド被覆材の安定性を、水理模型実験により評価します。津波越流実験で得られた知見より、防波堤港内側の腹付工や上部パラペットの設置等の、津波に対し粘り強い構造とする設計を行っております。
環境解析部
環境解析部では、数値シミュレーションを用いて海域の地形変化予測や環境影響評価を行っています。地形変化予測の業務では、航路埋没や海岸浸食などが生じる要因を解明し、効果的な軽減対策を考案します。環境影響評価の業務では、防波堤や埋立地などを設置した場合の流れや水質への影響の有無を予測し、影響が生じる場合はその軽減対策を考案します。これらの業務成果は、国や自治体が行う港湾整備や維持管理に活用されます。
技術的な強み
環境解析部はプログラム言語を使った数値シミュレーションやデータ解析を専門としています。海域の複雑な自然現象をパソコンで再現・予測、膨大な量のデータを短時間で編集・解析することを得意としています。
代表的な業務内容
河口域の地形変化計算
概要
沖縄県沿岸部などサンゴ礁で形成される海域では、潮汐、風応力、河川流入、波浪などあらゆる外力が重要になります。沖側にかけて急峻な礁斜面を有しており、外洋に面した海域では海流の影響を受けます。このようなサンゴ礁海域に適用できる流動モデルを構築しました。
地形変化の要因分析
河口域の地形変化は、出水、高波浪などの短期のイベント(数日間)、河川流量や波浪特性の季節変化(数ヶ月間)、周辺施設の建設に伴う長期的な地形変化(数年間)など、様々な時間スケールの地形変化要因が重なった結果として生じるものです。現地の観測資料や測量成果を分析し、外力と地形変化の関連性を時間スケールに着目しつつ検討します。
- 波浪・河川流量の分析
- ベント抽出、季節変化特性
- 測量データ分析
- 短期的地形変化、中・長期的地形変化特性
- 空中写真分析
- 河口地形の長期的変化特性
河口域の地形変化解析
要因分析結果に基づき、適切な条件設定のもとで河口地形変化解析を行います。条件の設定は、地形変化の時間スケールに対応し、以下の例のような条件を設定します。
- 短期的変化:出水時の河川流による
地形変化 - 中期・長期的変化:波浪の季節変化を考慮した砂州の形成プロセス
図 1は、出水時の流量変化を与えて、河口砂州のフラッシュを計算した例です。地形変化解析を行うことで、河口域の地形変化を短期、中・長期の視点で予測することができます。
図 1:河川出水による河口砂州のフラッシュ解析例
(出典元:益田港 県単港湾改修工事 航路埋塞対策検討業務)
潮流計算・海浜流計算
概要
沖縄県沿岸部などサンゴ礁で形成される海域では、潮汐、風応力、河川流入、波浪などあらゆる外力が重要になります。沖側にかけて急峻な礁斜面を有しており、外洋に面した海域では海流の影響を受けます。このようなサンゴ礁海域に適用できる流動モデルを構築しました。
図2:シミュレーションモデルの全体構成
流動シミュレーションモデルの全体構成
構築したシミュレーションモデルは図 2のように構成されており、サンゴ礁海域において重要になり得る外力を全て考慮しています。
- SWAN (Simulating WAves Nearshore):浅海から極浅海域での波浪の様々な特性を考慮した第三世代波浪推算モデル。
(https://www.deltares.nl/en/academy/swan-wave-modelling/) - JCOPE (Japan Coastal Ocean Predictability Experiment):
(独)海洋研究開発機構で開発・運営されている、地球規模の高精度数値シミュレーション結果。1993年から現在までの広範囲の水位、流速、水温、塩分の空間3次元分布データとして公開されている。
(Miyazawa, Y. and T. Yamagata: The JCOPE ocean forecast system, First ARGO Science Workshop, November 12-14, 2003, Tokyo, Japan. http://www.jamstec.go.jp/jcope/htdocs/home.html) - GPV (Grid Point Value):
気象庁が公開している、高解像度の風、気圧等の再解析データ。風応力や気圧の空間分布を設定することができる。
流動シミュレーションモデルの鉛直座標系
鉛直座標系には、Z座標とシグマ座標のハイブリッド座標系を採用しています(図 3)。
- Z座標
- 鉛直層厚を全領域で固定し、水深によって鉛直層分割数を変化させます。利点として水深勾配が大きい箇所でも安定して計算できる半面、水深の小さい箇所では層数が減るため、密度成層や密度流の再現精度が低下してしまいます。とくに、沖縄サンゴ礁海域の礁縁部のように、潮位によって干出する計算法は第1層目のみにしか適用できないため、礁内の大部分が単層計算になってしまいます。
- シグマ座標
- 鉛直層分割数を全領域で固定し、水深によって鉛直層厚が変化するため、水深の小さい箇所ほど鉛直解像度が向上します。ただし、礁縁部から外洋にかけての水深変化が大きい箇所では計算が不安定になりやすいという欠点があります。
そこで、上方にシグマ座標系、下方にZレベル座標系を結合することで、それぞれの座標系の長所を取り入れることができ、サンゴ礁域から外洋域を一体化したシミュレーションが可能になります。
サンゴ礁海域への適用例(白保海岸)
石垣島南東部に位置する白保海岸(図 4)は、礁内の最大水深がおよそ6mで、潮汐変動に伴って冠水・干出する礁嶺が沖側に発達した典型的な裾礁型のサンゴ礁域です。礁内は水深の小さい渡地(ワタンジ)により西部と東部に隔てられており、干潮時には東部が水たまりのように孤立します。西方には宮良川が近接しており、出水時は低塩分水が礁内に広がります。
図 3:ハイブリッド座標系
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- 水位
- 図 5(a)に干潮時の水位分布を示します。干潮時は礁嶺をはじめとして随所で水が干上がります。礁内では、渡地を境に水位勾配が大きくなっており、西部は礁外と同様に水位が低くなるのに対し、東部は周囲が干上がることで水たまりのように孤立している様子が表現されています。
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- 流速
- 図 5(b)に冬季満潮時の流速分布を示します。満潮時は礁外からの波の打込みによる流れが強くなります。冬季の白保海岸では、北風によって発達する波浪が回折して東方から波が打込むため、礁内では西向きの流れが強くなります。
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- 水温
- 図 5(c)に夏季の干潮時の水温分布を示します。水深の小さい礁内の高温水がリーフの切れ目から干潮時に礁外に流出する様子が表現されています。
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- 外洋の流れ
- 図 6に外洋域の流速分布を示します。サンゴ礁域から外洋域の一体的なシミュレーションが可能であり、黒潮をはじめとする海流の影響を取り入れることができます。
図 4:石垣島白保海岸
- (a) 干潮時の水位分布
- (b) 冬季満潮時の流速分布
- (c) 夏季干潮時の水温分布
- 図 5:計算結果の空間分布
図 6:外洋域の流速分布
海象解析部
海象解析部は、波浪に関する数値シミュレーションや観測データの解析などを主に行っています。波浪の数値シミュレーションは日本だけでなく、海外を対象にしたシミュレーションも実施しています。部員には外国人も在籍しており、多様な人材で構成されています。
代表的な業務内容
波浪の数値シミュレーション
海岸・港湾構造物の設計に必要な外力条件の算出(主に波浪)
※沖の波(外洋波)の計算
※沿岸の波(防波堤等の構造物に近いところの波)の計算
- 図:波浪シミュレーションの例
観測データの解析
NOWPHAS(ナウファス)の各種観測資料の解析
※沿岸波浪計、GPS波浪計、潮位
※潮位観測データの信頼性の検討
図:平均海面トレンドの解析例(内藤ら, 2018)
海洋の再生可能エネルギーに関する検討
風力発電施設(海上風車)の設置に関する検討
※数値シミュレーションを用いて風車に作用する外力を算定
※観測データを解析することで気象や海象の
特性把握
図:波高と風速の結合確率分布の推定例
調査解析部
陸と海の境界である沿岸域では、波、流れ、地形等の要因によって様々な現象が生じており、全国各地の港湾や海岸が抱える問題もそれぞれ異なります。例えば、港湾では、船舶が安全に航行、係留できるための静穏な水域の確保、航路水深の確保、また、海岸においては、海岸侵食の抑制、利用者の安全の確保が課題として挙げられます。
調査解析部では、このような課題を解決するために、現地調査を行い、取得されたデータの解析により現地の実態および現象を把握するとともに、数値シミュレーションによる予測計算により、各々の港湾、海岸の特性に応じた対策を検討し、提案しています。
代表的な業務内容
波浪観測見えない波を測る
海を眺めていると、沖から岸に向かって「波」がやってきているのは一目瞭然です。「波」と一言で言っても、波の高さ(波高)、波の周期、波の向き(波向)といった様々な指標があります。「波」は、波高や周期、波向が異なる様々な成分の波が重なり合っており、その中で私たちが目で確認できる波は「風波」と呼ばれています。
一方、波高が10cm程度で、周期が数十秒~数分程度の波を「長周期波」と呼びます。「長周期波」は「風波」に比べ、波高が小さく、周期が長いため、人の目では直接確認することができません。
「風波」の波高が高いとき、小さな船ほど揺れやすいことはイメージできますが、私たちの目に見えない「長周期波」は、大きい船ほど揺らされてしまうことがあります。
そのため、船が停泊している港内にどのような波が進入しているのか、その現状を把握するために、海底に波高計を設置し、「波浪観測」を実施します。「波浪観測」により取得されたデータを解析することにより、「風波」は勿論のこと、人の目には見えない「長周期波」の状況を把握し、その要因を分析しています。
「波浪観測」により、船が安全に停泊できない波高が確認された場合、防波堤や反射波対策(消波ブロック等)の設置といった何らかの対策を実施する必要があります。
調査解析部では、「波浪観測」により現地の波の特性を把握したうえで、効率的に港内の水域を静穏に保つ対策手法やそれらの配置を「数値シミュレーション」によって提案しています。
- 波浪観測や船体動揺観測により、船体動揺の原因(風波or長周期波)を把握する
- 数値シミュレーションで、現象を再現
- 問題を解決できる対策を提案
船体動揺の実態の把握、対策の提案の流れ
図 波高、周期が異なる波の重ね合わせ
図 長周期波が卓越する周波数スペクトル解析結果の一例
海岸保全計画の検討測量データを基にした砂浜の維持管理における健全度指標の提案
全国各地に点在する砂浜は、来襲する波のエネルギーを減衰させて波の打ち上げ高を低くし、越波流量を減少させる海岸防護機能を有しています。さらに、海水浄化機能や生物の生息・生育環境を形成するなどの海岸環境上の機能、人々がレクリエーション・スポーツに利用する機能を有しています。これらの機能の1つである砂浜の防護機能に着目すると、砂浜によって波の打ち上げ高を低減させることが課題となり、そのためには、砂浜の断面積を維持させることが必要となります。
砂浜を適切に維持管理するためには、目視点検により容易に判断できる砂浜の健全度指標を設定する必要があるものの、砂浜の断面積を目視点検により確認することは不可能です。そこで、長期間の測量データの整理・分析を行い、図-2に示すように、砂浜の断面地形は、砂浜の後浜天端高(3.8m)、移動限界水深(外浜外縁水深:8m)地点は変化せずに、汀線の前進または後退により断面土量が変化する特性があることに着目しました。
これにより、波のうちあげ高に対して背後地の安全性を確保する観点から、表-1に示す汀線の後退量に応じた砂浜の維持管理における健全度指標を提案しました。
ここでは、ある海岸に特定した砂浜の健全度指標を挙げましたが、各海岸の外力、底質、漂砂環境等により異なるため、個別の海岸にリーズナブルな健全度指標を設定していく必要があります。
- 図-1 第1区画の位置と施設名称
- 図-2 汀線変化と断面地形変化の模式図
A(要事後保全) | B(要予防保全) | C(要監視) | D(問題なし) | |
---|---|---|---|---|
汀線後退量 | 20m以上 | 15m~20m | 10~15m | 0~10m |
後浜天端高 | C.D.L.3.8m未満 | C.D.L.3.8m | C.D.L.3.8m以上 | C.D.L.3.8m以上 |
外浜外線水深 | 8m以上 | 8m | 8m以下 | 8m以下 |
離岸流調査砂浜の安全を守る
海水浴は人気のアウトドアですが、全国各地では毎年のように海水浴場で水難事故が発生しています。この要因の1つとして、海岸線付近で局所的に発生する沖向きの流れにより、気づいた時には足がつかないところまで体が流されていた、ことが考えられます。
この時、人の体は「離岸流」という沖向きの強い流れに流されています。「離岸流」は、沖から伝播する波および海岸付近の複雑な海底地形により生成されるもので、流れの速さは2m/秒(=オリンピックの水泳選手並み)に達することもあります。そのため、離岸流に逆らって岸向きに泳いでも、岸にたどり着くのはほぼ不可能なことが分かるかと
思います。
調査解析部では、上空からドローンを使って「離岸流」を撮影し、その発生状況を可視化し、「離岸流」の発生位置、規模、流速を把握するとともに、海水浴客が安全に海岸を利用できる情報を提供しています。
- ドローンによる撮影状況
染料を使った離岸流の可視化
(ドローンにより撮影)
図 染料の拡散状況の経時変化
航路・泊地埋没問題の対策検討
概要
航路や泊地における水深の確保は、船舶の安全な入出港に大きく影響を及ぼします。一方、波浪や河川流によって運ばれる土砂によって航路や泊地が埋没し、航行船舶の安全確保のために継続的な維持浚渫が実施されている港湾も多く見られます。これらのことから、航路・泊地の埋没現象を把握し、効率的な維持浚渫や対策工を検討することは、港湾を整備する上で重要となります。
現地調査による埋没の要因分析
埋没は、台風や冬季風浪等の高波浪や河川の出水等、様々な要因が複合的に作用することにより発生します。そこで、現地調査によってデータを取得し、それらのデータを解析することにより、埋没に及ぼす主要因を明らかにします。埋没現象を把握するための現地調査としては、例として以下の項目が挙げられます。
- 埋没を引き起こす外力となる波浪・流況観測
- 砂や泥の移動を把握するための濁度観測
- 埋没の経年変化や実態を把握するための深浅測量
これらの調査項目を組み合わせて詳細な分析を行うことで、複合的に作用する埋没要因の実態を把握します。
- 図1 現地調査の様子(左図:波浪・流況観測装置、右図:深浅測量)
- 図2 測量成果の例(左図:水深分布図、右図:2期間の測量成果の差分図)
図3 調査結果の分析例(高波浪と変化土量(埋没量)の関係
数値シミュレーションによる埋没予測
現地調査から得られた要因分析の結果に基づき、数値シミュレーションによる地形変化解析を実施し、埋没を予測します。数値シミュレーションの条件設定においては、現地調査を適切に反映し、現地の現象を再現しうるモデルを構築します。そのシミュレーションモデルを用いて埋没の予測を行い、最適な維持浚渫の計画立案や、埋没を軽減させる対策工の検討・評価を行います。
- 図4 予測シミュレーション結果の例(左図:現況、右図:対策工)