潮流計算・海浜流計算
パンクズナビゲーション
- ECOH
- 業務内容
- 数値解析・シミュレーション
- 潮流計算・海浜流計算
概要
沖縄県沿岸部などのサンゴ礁海域の流れは、潮汐、風応力、河川流入、波浪などあらゆる外力に起因しています。また、沖側にかけて急峻な礁斜面を有しており、外洋に面した海域では海流の影響を受けます。このような複雑な流れが発生するサンゴ礁海域に適用できる流動モデルを構築しました。
流動シミュレーションモデルの全体構成
構築したシミュレーションモデルは図 1のように構成されており、サンゴ礁海域において重要になり得る外力を全て考慮しています。
- ※1
- SWAN (Simulating WAves Nearshore): 浅海から極浅海域での波浪の様々な特性を考慮した第三世代波浪推算モデル。 (http://www.deltares.nl/en/software/1023814/swan)
- ※2
- JCOPE (Japan Coastal Ocean Predictability Experiment): (独)海洋研究開発機構で開発・運営されている、地球規模の高精度数値シミュレーション結果。広範囲の水位、流速、水温、塩分の空間3次元データとして公開されている。
(Miyazawa, Y. and T. Yamagata: The JCOPE ocean forecast system, First ARGO Science Workshop, November 12-14, 2003, Tokyo, Japan. http://www.jamstec.go.jp/frsgc/jcope/htdocs/topics/) - ※3
- GPV (Grid Point Value): 気象庁が公開する、高解像度の風、気圧等の再解析データ。風応力や気圧の空間分布を設定できる。
流動シミュレーションモデルの鉛直座標系
鉛直座標系には、Z座標とシグマ座標のハイブリッド座標系を採用しています(図 4)。水深勾配が大きい箇所でも安定して計算できるZ座標と浅い箇所でも鉛直解像度を確保できるシグマ座標を組み合わせることで、サンゴ礁域から外洋域までの一体的なシミュレーションが可能になります。
サンゴ礁海域への適用例(白保海岸)
石垣島南東部に位置する白保海岸(図 3)は、礁内の最大水深がおよそ6mで、礁嶺が沖側に発達した典型的な裾礁型のサンゴ礁域です。礁内は水深の小さい渡地(ワタンジ)により西部と東部に隔てられており、干潮時には東部が水たまりのように孤立します。西方には宮良川が近接しており、出水時は低塩分水が礁内に広がります。
- ①水位
- 図 4(a)に干潮時の水位分布を示します。干潮時は礁嶺部などで水が干上がります。渡地を境にして西部は礁外の水位に連動するのに対し、東部は水たまりのように孤立する様子が再現されています。
- ②流速
- 図 4(b)に冬季満潮時の流速分布を示します。満潮時は礁外からの波の打込みによる流れが発生します。冬季の白保海岸では、北風によって発達する波浪が回折して東方から波が打込むため、礁内では西向きの流れが強くなります。
- ③水温
- 図 4(c)に夏季の干潮時の水温分布を示します。礁内の高温水がリーフの切れ目から干潮時に礁外に流出する様子が表現されています。
- ④外洋の流れ
- 図 5に外洋域の流速分布を示します。サンゴ礁域から外洋域の一体的なシミュレーションが可能であり、黒潮などの海流の影響を取り入れることができます。